名古屋大学 大学院:博士課程教育リーディングプログラム(オールラウンド型)
文字サイズ
小
中
大
印刷する ページを印刷

PhDプロフェッショナル登龍門 フロンティア・アジアの地平に立つリーダーの養成

メッセージ

名古屋大学リーディング大学院プログラム オールラウンド型
「PhDプロフェッショナル登龍門:フロンティア・アジアの地平に立つリーダーの養成」
開始にあたって

国立研究開発法人科学技術振興機構理事長(前名古屋大学総長):濵口 道成


1951年生まれ。名古屋大学医学部医学科卒業、同大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。名古屋大学大学院医学研究科附属病態制御研究施設教授、同施設長、大学院医学系研究科長などを経て2009年より2015年まで名古屋大学総長。2015年より科学技術振興機構理事長。専門は腫瘍生物学・腫瘍生化学・細胞生物学。国立大学協会副会長。科学技術・学術審議会分化会長。グダニスク大学名誉博士、成均館大学名誉博士、モンゴル科学技術大学名誉博士。日本癌学会・日本ウイルス学会評議員。

名古屋大学リーディング大学院プログラムPhDプロフェッショナル登龍門(略称「登龍門」)の開始にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
名古屋大学は学術憲章を定め、「自由闊達」を大学の精神とすると共に、「名古屋大学は、先端的研究と、国内外で指導的役割を果たしうる人材の養成とを通じて、人類の発展ならびに世界の産業に貢献する」事を目指しています。また、私の総長就任にあたり、「濵口プラン」を定め、「名古屋大学からNagoya Universityへ」を掲げて、大学改革に取り組んできました。その中で、教養教育の充実、グローバルCOEプログラムの推進、グローバル30事業の推進等に取り組み、教育の国際化を大学の大きな目標として推進しています。また、国際化と共に重要な課題として、国際水準の若手研究者の育成に重点的に取り組み、特任助教制度を利用したキャリアパスプログラムの実施(Young Leaders Cultivation)や、産官への就業を推進するキャリアパス支援事業「B-Jin」を推進し、若手研究者の育成と博士課程修了人材の就職支援を積極的に推進してきました。

「登龍門」は、これらの経験をもとに、日本の次世代の発展戦略を担える人材を養成する事を目指すプログラムです。研究科を越えた大学院生のプログラムを推進し、アジアの多様にして歴史のある文化や国情を、留学生と共に体験的に学び、フロンティア・アジアで専門家として活躍できるリーダーを養成する事を目的としています。また、ノースカロライナに設けた名大の拠点NuTechのもとに「ノースカロライナ・アンビション・キャンプ」を開設し、英語で起業家精神を学習するプログラムを推進します。志を持った若い人材の参加を願っています。

プログラム顧問:杉山 直


1961年生まれ。早稲田大学理工学部物理学科卒業、同大学院理工学研究科修士課程、広島大学大学院理学研究科博士課程修了、理学博士。京都大学大学院理学研究科助教授、国立天文台理論天文学研究系教授などを経て名古屋大学理学研究科教授(宇宙物理)、名古屋大学評議員。宇宙マイクロ波背景放射の物理過程解明により、日本天文学会林忠四郎賞・日本学術振興会賞を受賞。日本学術会議連携会員。

1990年代の大学院重点化以降、大規模大学では大学院の定員が大幅に増加しました。名古屋大学もその例に漏れません。その結果、博士号取得後、ポスドク(博士研究員)にはなれるけれども、大学などの研究・教育機関になかなか職を得ることのできない人が多数でるようになってきました。これに研究・教育機関の定員削減が追い打ちをかけた結果、博士号取得者にとって任期のない職につくことが非常に困難になっています。

一方で、博士号取得後、研究教育職ではなく企業や官公庁などに職を得ようとすると、修士修了時とは異なり、多くの困難や問題が伴います。博士号所得者を採用することに対して積極的でないこと、採用されても修士修了時に就職したものと待遇面で差がないことなど、博士号の価値を認めてもらえないケースが大半です。

博士号取得者は、本来、高度な問題解決能力を所持した優秀な人材です。狭い研究領域のことだけにしか興味がなく、つぶしが効かない、という誤解もありますが、ポテンシャルが非常に高く、じつは柔軟な思考ができるのが博士です。

博士号取得者がアカデミアを飛び出して活躍できないのは、企業や官公庁などの側だけの問題ではありません。これまで、大学院教育が、後継者養成に偏ってきたことにもその大きな原因があります。

本プログラムでは、博士号取得者が、学術の分野で活躍するプロフェッサーではなく、プロフェッショナルとして社会のあらゆる場面で活躍するために必要となる教育を提供します。具体的には、自律的提案・解決能力、コミュニケーション・マネージメント力、国際性と文化への理解、異分野理解力、ディベート・自己表現力というスポーク能力と名付けた5つの力を獲得するための多彩なプログラムを実施します。一方で、名古屋大学の高い研究能力に支えられた専門能力はこれまで通り、入学した研究科できちんと修得してもらいます。こちらをコア能力と呼びます。コアとスポークの二種類の能力を高いレベルで獲得し、俯瞰力と独創力を身につけたプロフェッショナルとしての博士号取得者、すなわちPhDプロフェッショナルの養成こそ、本プログラムの目的です。

さて、これからPhDプロフェッショナルが活躍する場は、当然のことながら、日本を超え、世界ということになります。なかでも、今後大きな成長が見込まれるフロンティア・アジア各国が舞台となると考えられます。フロンティア・アジアとは、すでに大きな成長を遂げた中国や韓国、台湾などを囲む形で現在成長を始めている各国であり、名古屋大学の拠点があるモンゴル、ウズベキスタン、ベトナム、カンボジアなどが含まれます。これら各国との連携は、今後の我が国の成長戦略にも、重要な意味を持ちます。本プログラムでは、フロンティア・アジア各国での研修やインターンシップを通じて、それらの国の現実を知り、将来そこで活躍する人材を養成します。また、フロンティア・アジア各国からの留学生も積極的に受け入れます。

本プログラムで鍛えられたフロンティア・アジアの生の現実を知るPhDプロフェッショナルが、リーダーとして社会のあらゆる場面で活躍することを期待しています。